第19回滋賀サイエンスカフェを終えて

吉田朋子氏の「人工光合成と光触媒」の話をきいて~

今、世界中を脅かす気候危機の原因CO2の排出削減と大気中濃度の低下は喫緊の課題、最短で何とかできないかとの暗澹たる気持ちで過ごしている時に、サイエンスカフェで「人工光合成と光触媒」について、吉田朋子先生から夢の最先端科学技術のすごい話を聞くことができました。

 

理系・文系の頭脳回路に関わらず、コーヒーを片手に聞くには難しい内容ではありましたが、先生の講演では、生活の中ですでに身近になっている光触媒の話や、天然の光合成は何段階もの反応をさせているのに対して人工光合成は光触媒を使ってCO2を還元させる反応だという導入で、すっかり話に引き込まれました。

太陽エネルギーで光触媒を使って、水とCO2からエネルギー源となる水素やメタンと、プラスチックなど化学工業の出発物質になるCOを発生させられるとは!光触媒の研究がここまで進んでいると知り驚きです。銀粒子をのせた酸化ガリウム光触媒が効率よくCOを発生することを発見した吉田先生の研究のお話では、小さな微細のものを見る技術と触媒を探しあてる研究者の情熱が伝わってきました。

人工光合成は、化石燃料に頼らないエネルギーを大気中のCO2から創生でき、2050カーボンニュートラル・低炭素循環型社会が達成でき、宇宙にまでつながっている、まさに一石二鳥の夢の技術。人工光合成・光触媒研究の位置づけと期待の大きさも分かりました。光触媒の研究は、日本が世界でトップだとか。頼もしい次第です。

しかし、人工光合成の実用化には、大きな課題がありもう少し時間が必要とのこと。科学の研究は、人工光合成だけに限らないのですが、研究費や研究時間、エネルギーの確保など様々な困難が立ちはだかる現実を憶測し、日本の研究力が世界で13位まで低下したと批判される大学の研究の厳しさに頭の下がる思いです。

光触媒の話の途中で、難しい内容にも関わらず参加者から様々な質問がでてきました。吉田先生の話に感銘した人たちからの応援エールのようにも感じました。

そして何より感動したのは、先生の経歴の話が、決して女性研究者の苦労話ではなく、ユーモアたっぷりに、これまでの研究生活を支えてくれた周囲の人々への感謝にあふれ、教育者として人との関わりを育てたいとお聞きできたことです。先生のお人柄に触れ、会場が和やかに盛り上がりました。

ご多忙の中にも、市民のためにご講演くださった吉田先生に心より感謝し、今後のご活躍と人工光合成の発展を心より願いたいと思います。

松村順子